9人が本棚に入れています
本棚に追加
その時、公園の暗がりに歌音らしき声が聞こえた。
「ちょ……て……さい」
「……………だろ?」
だんだんと近付くにつれ、声の主が明らかになっていく。
「やめてくださいって先輩!」
その声は歌音で間違いなかった。嫌がって、怯えているように聞こえる。
「いいじゃん、恋人でしょ?俺ら」
「やだっ、やだぁっ」
俺はいてもたってもいられなくなって歌音の元へ走り出した。けど、少し遅かった。
歌音とあいつが重なってく。
「ちょ、ん…ふぁ…んん…」
俺の足が固まったように動かなくなった。
時々、あいつらの音と息遣いと、歌音の涙が見える。
羨ましいよりも怒りがはるかに上回っていた。
もう一度、力強く走り出す。
「…っ、かのんっ!!!」
最初のコメントを投稿しよう!