序章 【魏琉】

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カサカサと木の葉が風に揺れる。 ここは秋の国。 寒くもあり、暖かくもあるこの国は…蛇である自分には丁度いい。 紫色の着物に身を包み、春色の布で古傷ごと両目を覆う。 紫は血に塗れた自分を隠すため。 春色の布は同じ過ちを繰り返さないため。 髪を触るのは 寂しさを紛らわせるため。 固い髪も やわらかい髪も さらさらな髪も ごわごわの髪も それぞれ個性。 でも、 どこか他人に 母の面影を探しているのかもしれない。 柔らかくしなやかなきらきらとした綺麗な髪。 父は確かそう言っていた。 長くても短くてもいいから 理想を追い求める。 この国では何が見つかるだろうか。 [ギーヴル魏琉] 固くなる表情を無理やり笑顔にする。 秋の国、ここで彼の求めるものとは。 ,
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