トイレの怪物

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あたしは急いでバッグを手に取り、出口に向かった。そしてバッグの中に手を入れ、車のカギを手探りで探した。 すぐに車にエンジンをかけるためだ。 だがこんな時は焦ってなかなか見つからない。 誠がトイレから何か叫んでいるが、もうどうでも良かった。早くここから出なきゃ。それだけだった。 誠に気付かれたら何をされるか分からない。最悪のことまで想像出来る。 あたしは足音を立てずに早足で出口へ向かった。 玄関に目をやると、誠の靴とあたしのサンダルが並んで揃えてある。 さっき入って来る時にあたしが揃えたのだ。 こんなことになるなら無理して履きづらいサンダルなんて履いて来なければ良かった。 あまり出掛けることのないあたしは、お洒落なんて滅多にすることがなかった。 普段は袖を通すことのないお気に入りのワンピースにサンダル。 今日は特別だった。 念入りにお洒落をして来たことをあたしは後悔した。
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