明の章

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体調を崩して寝込むと、決まって見る夢がある。 暗闇の中でヒコと会う。 夢の中であんなに間近にいたにも係わらず、起きてしまえばその姿はうろ覚えである。 ヒヅメ(日出女)は、ゆっくりと瞼をあけた。 金と翡翠が入り交じった光彩を放つ丸い両の目が並んでいる。ヒヅメが目覚めると喜んで赤い舌でヒヅメの顔を舐めた。 『キュイィィィィ』 笛のような声でなくこの生物は幼龍である。 「イブト。」 名を呼んでやると嬉しそうに顔をすりよせてくる。 イブトの声で隣に寝ていた妙齢の巫女が飛び起きた。看病疲れでそのまま寝てしまったのであろう。 「あ、お目覚めですか。気分はいかがです?ほら、イブトおのきなさい。」 『キューゥ』 フシノ(富紫乃)が体調60センチのぽっちゃり気味の幼龍を抱き抱えて床に移動させた。 「ん、もう大丈夫みたい。ごめんね、心配かけて」 フシノは笑って 「なに、しおらしいこと言ってんですか。ごはんは食べれそうです?」 ヒヅメは頷いた。 「では、仕度してきます。ほら、イブトもおいで。」 一人と一匹が出ていくとヒヅメは大きく嘆息して起き上がった。 床の上に赤い敷布、そして赤い掛け布。自分はそこに寝ている。赤は魔除けの色だ。 そして回りには 水を張った水盆。鹿の角に紐を巻いたもの。宝剣。得体の知れない黒い粉末の粉。 さまざなマジナイ道具である。 「また、倒れたのか私。」 自分に何かが憑いてるんじゃないかと不安になる。 イブトはもともと水龍山の龍だ。ヒヅメが寝込むとなぜか此処に連れて来られるのだ。
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