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「やっと、この日が来た…」
全身鏡を前にして、私はふ…と呟く。
新しい制服に身を包み、仕上げに赤いリボンをキュッと結ぶ。
くるん…と一回転して、晴れてセーラー服からブレザーに変わった自分を見つめる。
受験勉強、必死にして良かった。
あたしもやれば出来る子なんだ。
自信気に仁王立ちし、ふふ…と唇の両端を上げる。
「…まっ!何してるの鏡の前に立ってニヤニヤして…。
入学式そうそう、どうかしちゃったのかしらこの子は…」
声がした方を振り返ると、私の部屋のドアから首を出している呆れ顔のお母さんと目が合う。
「え?ニヤニヤしてた?」
「してたしてた。もう凄かったわ」
凄かったって、どういう意味?
良い意味なのか分からないけど、とりあえす良い意味としておこう。
「もう、朝ご飯出来てるから早く下りて来なさいよ」
「はーい」
「お願いだから、遅刻はしないでよ?」
「うん、分かってるって」
ニコニコの笑顔でお母さんにそう返すと、「本当に大丈夫かしら…」と心配そうに顔を歪めながらドアをパタンと閉めた。
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