狼くん

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自己紹介が終わり、大神くんは先生の指定された席に行く。廊下側の一番後ろの席。窓側の一番後ろの席の私とは離れた席。 こりゃ関わることはないだろうな、と思いながら大神くんに目を向ける。 たくさんの人に囲まれている大神くんはニコニコと人のいい笑みを浮かべている。たまに口許から覗く八重歯が彼の可愛らしい。 「中々のイケメンじゃない?」 ニヤニヤと楽しそうに笑う雪美に「タイプなの?」と聞くと彼女は肩を竦める。 「まあね」 「彼氏に怒られるよ」 「そんなことで怒るような小さい男じゃないから。それにタイプと実際に好きな男は違うのよ」 余裕綽々という風な雪美に「ご馳走様です」と手を合わせる。 「いいねー。ラブラブな彼氏がいて」 「まあね。あんたも見つかるといいわね。自分より強い男」 そのとき、「涼子!」と私を呼ぶ声。声の方を見れば、教室の扉から半身を乗り出して静也。私は雪美に一言謝り、静也に駆け寄る。
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