狼くん

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朝、学校に行くとアチラコチラから向けられる好奇の目。 おかしいなと思いながら自分の席につけば、前の席の白石 雪美(しらいし ゆきみ)がこちらをむく。 「聞いたわよ、涼子」 日本人形のような整った顔に悪どい笑みを浮かべながら、雪美は罪を認めろと言わんばかりに指に挟んだポッキーを私に突きつける。 「何のこと?」 「惚けないでよ」 私につきつけたポッキーをゆらゆら揺らしながら雪美は続ける。 「昨日、やったんでしょ?」 「やった? 何を?」 「昨日、あんたに決闘申し込んだ身の程知らずの暴走族リーダーよ」 ああ、あの人。暴走族のリーダーだったんだ……。どおりで柄が悪いと……ん? 暴走族のリーダーをやった?やったってまさかっ! 「殺ってないから!」 「またまたぁ」 全く聞く気をもたない雪美に私は叫ぶ。 「ほんとに殺ってないからっ! 相手が腰抜かしただけ!」 そう言った途端、静まり返る教室。やってしまった、と後悔してももう遅い。 「暴走族のリーダーが腰抜かすって……」「マジか……」「さすが」 ざわめくクラス。ああ、また噂が広まる。 ガクッと肩を落とす私の肩に雪美は手をおき清々しく笑った。 「また武勇伝が増えるわね」 「嬉しくない……」
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