第一章

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 俺はそう宣言して手を一回叩いた。それぞれが掲示板から各々気に入った依頼書を取ると受付に向かって行った。 『さて、俺もやりますか』 『稼がぬと破産するぞ主よ?』 『怖いこと言ってんじゃねーよ!』  えっと? 討伐依頼と護衛と採取とお使いみたいなものがあんな。ま、護衛は時間かかるから却下で。お使いはコストパフォーマンスが悪いからこれも却下で。あとは討伐と採取だけど……ま、危ないのはしないって言ったばっかだし。  ここは採取にしとくか。そこそこコストパフォーマンスもいいし。討伐系のが稼ぎはいいんだけどなー。危ないしなー。  ヤクイダケっていうキノコみたいなやつの採取と薬草の採取とハチミツの採取の依頼があるけど……ま、全部受けるか。どうせ全部同じ所で採取できるらしいし。  依頼書には依頼主と依頼内容、期限と何処に行けばいいかが書かれている。俺にとって重要なのは内容と場所だけだから他の箇所は見てない。見ても依頼主とはギルドが仲介するし、期限なんざ今日の日没までに終わらせるんだから意味ないんだよな。  三枚の依頼書に狙いを定めたところでふと隣を見ると、気の強そうな瞳をした黒髪黒目の女子がいた。髪は肩くらいまでのセミロングで、絹みたいな艶がある。新雪みたいな白い肌に高めの鼻。ヴァイオレットの外套を羽織っている所謂美少女である。  所謂美少女である。  大事なことなので二回言いました。 『大事か、それ……?』 『大事だろ。少なくとも俺にとっては』  熱心に依頼掲示板を見つめる美少女。なんでこんな所に一人でいるんだよと思わなくもない。思わなくもないが、センリとかエレナとかも一人で依頼受けて行ったし。まあ、べつに珍しいことじゃないのかもしれない。
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