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「この裏切り者!」
違う!
「咎人め!」
違う、アタシじゃないの!
「恥知らずな罪人め!」
違う、違うの! アタシの話を聞いて! ねぇ、お願い、聞いて!
「お前なんていらない!」
アタシがいったい何したっていうのよ!
「――消えちゃえよ」
……もうヤダ。
助けて。ねぇ、助けて。
誰かアタシを助けてよ――!
俺は今、小綺麗な木造の宿屋の二階の一人部屋のベッドに腰掛けて頭を悩ませていた。時間は気持ちのいい朝で、ガラスの窓から降り注ぐ朝日が部屋を照らしていて、ともすれば二度寝でもしてしまいそうな陽気。センリたちは別の部屋に泊まっている。
城を出て一週間。順調に旅をして魔物との戦線、人間が住む地域と魔物が住む地域の境界線に位置する町に来ていた。
「どうしてこうなったし……」
頭を抱えて目の前のテーブルの上に乗っている袋を見る。その袋は中身がほとんど入ってないからか、ペチャリと潰れていた。
「金がッ……ねぇ……!」
俺の目の前にある袋。
これ、財布なのよね。金入ってないけど。
あいつら……!
拝啓現代日本の歯車として働くサラリーマンの親父へ。
俺のパーティの面々はお金の大切さがわからないようですッ……!
ここが漫画なら地下帝国に流されてますよ……!
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