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斎藤さんが事情を説明して、最後に三人の視線が私に向いた。
こういう時、必ず見られるのが左目。だから人の前にいるのは嫌い。
どうせ離れていくんだから、事情を説明したって無駄なの。
私はどうせ、“独り”なの。
「なんでもいいけどお前…」
左側に座っている男の人が、私をまじまじと眺める。
言われる事は多分、左目の事なんだろうけど。
「…いい女だなー」
「土方君…そんな時じゃないでしょう…」
左側の男の人が言った言葉に、右側の男の人が呆れたようにため息をついた。
当の本人である私は、驚きを隠せないでいる。
そんな事、初めて言われた。最初に言われる事といえば、決まって左目の事だったから。
ただ……視線がいやらしいのは気のせいだろうか。
「…土方さん、この娘、ここに置いてやってもらえませんか?」
また斎藤さんに驚きの視線を向ける。どうしてそんな事を言うのか、分からなかったから。
確かに、ここから自分の元いた場所には戻れないだろう。でも私、まだ何も話してない。
自分のこととか、どこにいたのかとか。これから、どうしたらいいのかとか。
何も言ってないのに、そんな事を言ってくれるの?
私のこと、気持ち悪くないの?
「あ?俺はいい女がいる事に反対はしねぇよ。近藤さんと山南は?」
土方というらしい左側の男の人の問いかけに、残り二人は顔を見合わせた。
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