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「私はいいと思いますよ。女の子一人なんて危ないですから」
「俺も山南と同じ意見だ」
順に右側の山南というらしい男の人、真ん中の近藤というらしい男の人。
……私…ここにいていいの?
ここに…いさせてくれるの?
今まで、私を見た人は左目が原因で皆離れていった。だから、私も人から離れた。
多分、今回も駄目なんだろうなって。私が普通じゃないからって。
初めて、人に認められた気がした。
「なぁ、お前名前は?まだ聞いてねぇんだけど」
土方さんに聞かれ、少し戸惑った。この人、私を見る目がいやらしいから。
「……弥代月葉です…」
「月葉かー、いい名前だなー」
「…土方さん、手を出さないでくださいよ」
斎藤さんの言葉にえっと声を漏らし、思わず斎藤さんの後ろに隠れた。
「おい斎藤、お前のせいで月葉が俺から離れたじゃねぇか」
知りません、と斎藤さんは土方さんの言葉を流した。
でも私は、土方さんの言葉が残る耳に意識がいっていた。
スムーズに呼ばれた名前。最近は、親からも呼ばれなくなっていた。
その名前を、なんの違和感もなく呼んでくれた。
ここに来てから、何も感じなかった私の胸が、嬉しいと二回も感じている。
私…ちゃんと“人間”なんだな…
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