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「とりあえず、君がここにいる事を報告しなければならない人がいる。来てくれるか?」
小さく頷き、立ち上がった斎藤さんに続いて歩き出す。
この建物の造りも昔の感じ…和風な物しかない…
……でも認めたら、頭のおかしい人になりそう。今は考えないようにしよう。
分からないものは、分からない。
そういえば私、鞄どうしたっけ。斎藤さん、運んでくれたの私だけかな。
まぁ、必要な物なんて入ってないけど。携帯だって、連絡する人がいないし。
もういいか。
……斎藤さん…左目については触れなかったな…
でもどうせ、心の中では気持ち悪いと思っているんだろう。皆、そうなんだから。
私の左目を見て、“普通”だと思った人なんて…一人も…
片手で左目を覆う。できれば隠しておきたいけど、隠せる物もない。
それに、隠したらもっと不審に思われる。そう思って、ずっと隠さないでいた。
結果なんて、同じなんだけど。
「………ここだ。いいか?」
覆っていた手を退け、また斎藤さんに頷く。失礼しますと言って襖を開けた斎藤さん。
部屋の中には、男の人が三人いた。
「…斎藤、どうしたんだその女」
並んで座る三人の内、真ん中に座っている男の人が、私を見てそう聞いた。
「拾いました」
真顔でそう答えた斎藤さんに、驚きの視線を向ける。
間違ってはいないけど…拾ったって…犬や猫じゃあるまいし…
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