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「………」
奏はその手を一瞥しただけで、無言で立ち上がると、無意識に何かを探すように辺りを見回した。
「…か」
「んー?」
「誰か…いや、…それより、何故お前がここがいる?」
奏は前髪を荒くかき上げながらも、その顔を覗き込めんで来る慧吾から目を逸らす。
「お前の探してる相手に教えてもらった。そう言ったらお前はどうする?」
「!」
「だからうちに住めって言っただろう?」
「…お前、何を…」
一瞬。微かに表情を変えながらも探るように睨みつけるその眼差しを見ながら
「ククッ、これは楽しくなりそうだ」
秋月慧吾は愛しげに触れる。
持ち主を失った黒い《手帳》を。
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