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包みこまれた手を見る。小さな手は暖かく優しく包みこんでくれた。
「礼を言われるような事はしてない、俺自身の為にした事だからな」
素直に受け入れればすぐに終わるのだろうか。何故か礼を言われると本心から否定してしまう。
「それでも私は、私たちは貴方に救われたの、だからありがとう。わかってくれるまで言うからね」
桃色の髪の女性は素っ気無く返す俺を気にすることなく言い放つ。
「……どういたしまして?」
なんと返していいかわからずに語尾が上がってしまい疑問形になってしまった。
「はい。あ、私の自己紹介してなかったね。私は」
「ラーズさーーん!結果出たよー!」
彼女の声に被せるように屋上の入り口から大きく俺を呼ぶ声が聞こえた。
ギルドの後輩で今の俺に色々付き添ってくれているセシルだ。
結果の書かれた紙をこちらに持ってきてくれたのだろう。
手にした紙をピラピラと振りながらこちらに掛けてくるセシルは子犬のようだった。
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