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「ひーくん!一位!一位!」
褒めて褒めてと言わんばかりに飛びついて来る姉さん。犬なら十中八九、尻尾をぶんぶん振っているだろう。同時に突き刺さる視線!ヒャッハー!傍から見るとマジリア充!爆発しろ俺!
「あのー姉さん?一応わたくし達は敵チームな訳で…あまりこういうのはどうかと…」
俺がやんわりと引き剥がそうとすると、はい誰もが予想出来た展開。
「…周りなんていいもん。ひーくんは…嫌?」
「あばばば」
はい男がなんて答えたらいいのか不明な質問来ましたーっ。
「嫌じゃ無いけど…不味い」
「そんなぁ…」
と悲しそうな顔をしながらも結局は離れない姉さん。
「そう不味いの。だから離れましょうねっ!」
と、そこに後ろから伸びて来た手が俺達を綺麗に引き剥がした。
「り、燐火!」
「…私もいるぞ」
「火織姉!」
声に振り返ると、笑顔に怒りマークを貼っ付けた燐火と、運動用だけどちょっとオシャレで涼しげ(露出多め)な出で立ちの火織姉が立っていた。
「あたしが火織姉を迎えに行ったの!」
「グラウンドの場所は覚えていても、お前達の席までは分からないからな」
そうドヤ顔で説明する二人を他所に、ソロソロと近付いてくる姉さん。
「くっ!」
ガスッ
「ななじゅうにっ」
だというのに、燐火のローキックで地に手を付くのは俺。不条理な世の中だ。
「早く次の競技行くわよ!ヒヅ兄も出るでしょ!」
「…うん」
動物が引っ立てられるかのごとく連れていかれる。これが噂の激おこぷんぷん丸とやらか。
「帆乃火の世話は任せろ」
「私ペットじゃないよぉ!あ、でもひーくんのペッ」
俺はそのセリフを最後まで聞く事無く、招集場所に向かった。
「…ま、全く入り込めなかった…恐るべき姉妹だよ…」
ーーーーーー
《第二競技:100m走》
「なんだ、燐火も走るのか?」
入場門の少し手前。暇なので隣にいる妹に問いかける。
「なんか簡単じゃない。走って終わり」
「はは、お前らしいよ」
サバサバしてる燐火らしいといえばそうか。俺がそう笑うと、突然燐火は頬を染めて俯いた。
「あ、あの…ね?だから、これで一位になったらごにょごにょ」
「んー?聞こえないし、呼ばれてるから行くわ」
俺はもじもじと何か言いたそうな燐火と別れ、二年生レーンに移動した。
「もー!最後まで聞きなさいよーっ!バカーッ!」
『う、碓氷さん話なら俺が』
「ふんっ!」バキッ
『ごほうびっ』
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