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『チッ…あいつ一人で何やってんだよ』
『…ほんとにさ』
…水くせぇ。そんな声が上がり始めるクラス。
「…愛されてるんだね。碓氷君」
「…うん」
「さて、そんな愛されてる碓氷君のために今私たちは何が出来るかな?」
スポーティなウインクを飛ばして私に問いかける琴。
「…うん」
私は首だけを後ろに捻り、さつきちゃんを見る。さつきちゃんもまた、これが好機と見たのか携帯を置いてこちらを見ていた。
「私、行くよ…!」
C○DMWシリーズなら最後などの名シーンに流れるメインテーマが聞こえて来そうな中、立ち上がる。だが。
ガラッ
「席につけ。何を騒いでいる」
『『!!』』
私達の教室に突然現れたその人物は。
「原…先生…」
「何だ新垣。今は自習中だぞ。なぜ立ち上がっている。他の奴らも同じだ。早く席につけ」
高圧的にそう吐き捨てると、フンッと鼻を鳴らして荒々しく教卓の椅子を陣取った。
混乱する私達を他所に、いち早く立ち直ったさつきちゃんが堂々と一歩も引かずに質問する。
「先生。なぜ先生がここに…?紫先生は…」
質問を予期していたのかしていなかったのかは分からないが、相変わらず忌々しげに鼻を鳴らし、
「お前は…田村か。どうもこうも、お前の同僚と上司が色々やらかしてな。立ち歩いていたもんで教室に教師を配置する事を提案したら、たまたま校長がいなかったので通ったんだよ。案が。そして私は危険人物に加担する阿呆がいないようにこのクラスを受け持ったというわけさ。鞍掛先生は今頃職員室の仕事で忙しいんじゃないか?」
そして初めて笑みをみせる原先生。私はその笑みに薄ら寒い物を感じて硬直した。この人は…普通じゃない。
「やらかしたって…何をしたんですか二人は!?」
「それをお前が知る必要はない」
「くっ…」
相手は教師。権限で勝てるはずもなく、悔しそうに唇を噛みしめるさつきちゃん。
『…』
他の生徒も同じようにやり場の無い怒りを溜め込んでいるようだった。
そんな生徒達を見て、自分が勝ったとでも思ったのだろうか。先生は少し嬉しそうに相好を崩し、
「全く、教師陣といい生徒といい馬鹿なんだ。天候なんて運命じゃないか。そんな物に抗おうとするから辛くなる」
「ちょっと、そんな言い方…」
ついに口を開いてしまった私。原先生はそんな生徒が出るのを待ってましたと言わんばかりの笑みで、
「じゃあ、お前は論破出来るか?」
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