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取り敢えず下には向かわず、階段で四階に上がる。
…実は階段で走った時に、スカートが捲れてサービスしていたのは内緒だ。
「くっ…猪口才な」
少し体力が無くなってきたのか、距離が空いた。今の内に考えよう。
(体力切れを待つ…?無理だ。私の方が体力は絶対に無い)
フリーのホラーゲームなんかの、学校モノとかの主人公ってこんな気持ちで逃げてたんじゃないかな。いちろ少○忌憚とか。昔火塚君家でやった事あるよ。
なんて余裕を見せていたのが悪かった。
「い、行き止まり…!」
四階の隅っこに自ら追い詰められてしまった。先生がいるはずの廊下の曲がり角からここは見えないけど、見つかるのは時間の問題だ。
「と、取り敢えずっ!」
私はその角の教室…化学実験室に飛び込んだ。
「ハァハァ…」
駆け足の音は遠くで止まり、同時にガラガラと扉を開ける音が聞こえてきた。つまり、追い詰めたと分かったので一教室ごとに確認して行くつもりだろう。
バッと辺りを見渡すと、薬品室などの扉が開いていた。どうやら部活の後に閉めるのを忘れていたようだ。
中に入るが霊などは存在せず、棚に並べられた実験道具の数々があるだけだった。
何か使えそうな物は…
→ 青酸カリ
たっぷり入った濃硫酸
トリニトロトルエン
掃除用モップ
「何で全部凶器なのよっ!」
小声で自分にツッコミ。意外と余裕あるじゃない私。
「と、とりあえずこのモップで…」
「み ィ つ ケ タ」
「!!」
突然背後から聞こえた声。恐怖に引きつり、壊れたゼンマイのごとく振り返る。
「ふふふ…ははは…ここまでコケにされたの初めてだ…指導が必要だ…指導が…シドウガ…」
私は崩壊した先生の声を聞きながら死を覚悟した。
ーータタ
あぁ、ここで死ぬんだ私。死ぬときって本当は、怖くて声も出せないんだな。
ーーータタタ
死にたく、無いなぁ…火塚君…助けて…
ーーータンッ!
「…助けて」
ドガッ!!
そこで私は、人生三度目の奇跡を体感する事になる。
鈍い音と共に狂気に歪んだ原先生の顔が視界から消えた。
「火塚君!?」
まさかの存在に期待しながら顔を上げると、
「氷火流…氷連脚(ひょうれんきゃく)…期待に添えなくてごめんなさいね」
「り、燐火ちゃん!」
そこには、足を振り切った姿勢で微笑を浮かべた燐火ちゃんがいた。
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