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「…んん、とにかく、私が言いたいのはそう言う事では無くて」
「俺も別にそんな事は聞きたくなかったよ」
「「…」」
「…たとえ結果がついて来なくてもだ、その過程には意味があると私は言いたい」
「…」
「お前は器用だ。それは過去形じゃない。今もだ。だからこそ結果を残せない自分を責める」
「…」
「たとえ体育祭が開かれなくてもだ。私はお前が。一生徒でしかないお前が学校と天候を相手取って一人で戦おうとする。その姿勢だけでも評価に値すると思うんだ」
違う。俺は…
「…そんな事じゃない」
「うん?」
「そんな事じゃないんだ…!」
ググ…両の拳を握る。うん、まだ動く。
「俺は…評価なんで欲しくない。そんな事のためにやってたんじゃない」
「ほう?ならなんのために?」
脚に力を入れる。うん、まだ動く。
「俺は…ただみんなで体育祭をやりたかっただけなんだ。ただ…それだけで…」
肩も、まだ動く。
「ならさ、みんなでやろうじゃないか」
火織姉の提案。だけど。
「こんな事に皆を巻き込む訳にはって何度も…」
「じゃあ!」
そう言いかけた俺に、火織姉は。
「体育祭を開催させたいと思っているのがお前だけだと思っているのか?」
「ーーーッ」
ザアアアアーー…
最後の頑張りとばかりに雨が一際強くなる。
「最初から無理な賭けだったんだろう?それでも、応援してくれる人は必ずいる」
そして火織姉の携帯が鳴る。火織姉はそれを見て、少し操作すると俺に見せた。
『火織姉、ヒヅ兄が外に行ったみたい!助けに来て!』
『ひーくんがやろうとしてる事、学校中に広まってるみたいだよぉ。火織ちゃんも来てねぇ』
「…」
続いてT○itterなどのSNSも見せてくれる。そこには沢山の応援が。
「なんで…皆」
素直に、嬉しかった。一人でやってるわけじゃなかった。俺は、単独行動しているようで、皆に支えられていたんだ。
「皆、駄目元でお前に賭けてみたかったんだと思うよ。お前はヒーローじゃない。だから一人で全部解決する必要はない」
腰に力を入れる。うん、まだ動く。
「…でも。お前がヒーローになりたいなら。やるしか、ないよな」
全身に力を入れる。…まだ、立てる…っ!!
ザリ…
「ありがとう火織姉」
「…良い目だ」
「俺に…」
スッ。拳を構える。
「力を貸してくれ」
火織姉は優しく微笑み。
「お安い御用だ」
「「氷火流…霜柱(しもばしら)」」
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