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「ん、ん、さーて、感動してる場合じゃないんじゃないか?」
「火織姉…そうだな」
完全に手持ち無沙汰な火織姉の咳払いを受けて、俺達は全員目を合わせ、クスリと微笑む。
そうだ。俺達はもう、体育祭ができようができまいが、そんな小さな事は、もう良いんだ。何か一つの事に向かって全員で団結する。俺達は今、全力で青春している。
「さ、もう一踏ん張り行きましょう!」
『おーー!』
と、全員で手を重ねてから上に跳ねあげる。部活並みの気合を入れたその時。
『おーい!』
「なんだ?出鼻を挫かないで欲し…」
「いや火織姉。これは…」
そう。大きな声と共に、ガヤガヤと昇降口から溢れてくる人、人、人。
「…援軍か…っ!」
そう。それは俺達が待ち望んでいた、一般生徒からの援軍だった。
『おい火塚。面白そうな事やってんじゃねえか。一枚噛ませろ』
『うほーっ!雨に濡れた碓氷姉妹エロっ!』
『新垣もやばいぞ!』
「あー…皆、目的は違えど取り敢えず集まってくれてありがとう」
『水臭え。俺達だって体育祭やりてぇんだよ!』
『そうよ!今年最後だからって先生説得してきたんだから!』
…やべ、涙出そう。俺のエゴから始まったこんな計画に、学年問わず、沢山の人が駆けつけてくれる事がこんなに…嬉しいなんて。
と、感傷に浸ってるうちに、気付けば雨の中、ほぼ全校生徒が校庭に集まっていた。
「愚民ども!私について来い!」
『おおおおお!!』
火織姉は朝礼台にメガホン持って登って生徒を愚民扱いだし。生徒ノリノリだし。なんだよもう。一人で抱え込んでた俺バカじゃん。
「さ、出番だぞ火塚」
と、ここで壇上の火織姉からマイクパフォーマンス要求。誰もがシーンと黙りこくり、次の言葉を待っている。
だから俺は、なんの気負いも無く、思ったままの言葉を胸に秘め壇上に上がり、叫んだ!
『光台高校!大好きだぁぁぁ!
』
『おおおおお!!』
決して誰かのためじゃない。でも、自分のためにが集まると、大きな皆のためになる。
「そうだ。俺達は…未来のために。生きるために、取り組むんだ」
「そこは戦わないんだ!戦ってよ!」
ーーーーーー
「はい」
「はい」
『ほい』
『ほい』
「OK。そこに流して」
『うーい』ドババババ
「早い…」
「さ、作業効率がダンチだ…」
援軍到達から僅か十分ほど。数により部隊編成が可能になったおかげで作業効率が段違いに向上した。
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