10:とある戦争(バトル)の大将旗(死亡フラグ)

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「俺…まだまだでした」 ヒリヒリと痛む頬を気にせず顔を上げる。今日は気合いれてばっかだ。 『よーし!ぶっちゃけ適当にベラベラ喋っただけだが結果オーライのようだな!』 「おいコラテメェ」 『ふはははは!だがしかしお前が再びやる気になったのなら問題ない!』 「…ちょっとした軽口からここまで叱っていただいて」 『良いって事よ』 『部長!塩化カルシウムトドメにまきましょう』 『そうだな。吸湿効果もあるしな。ちょうど倉庫だから持っていくぞ。…ではな。ネバーギブアップ!』 「あ、やっぱりシジミの人でしたか」 後輩と塩化カルシウムの袋を運び出していた先輩は、良い笑顔でサムズアップし、指示を出しながら立ち去ろうとする。 「…ありがとうございましたっ!!」 『フッ』 俺がその背中に最高の姿勢でお礼をするのを確認した後、先輩はその場を去って行った。 「…ふぅ」 「随分熱い人だったねぇ」 「…いつからいた。姉さん」 「うん?えっとねぇ。『ゴルぁ!!』辺りから」 「最初っからかーい。なーんで黙って見てた」 「いや、暑苦しかったから」 「ふ、不憫すぎる…」 「もう。そんな事はどうでも良いの!みんな待ってるんだよ!?」 姉さんのその声に押されるように校庭へ振り返る。事前準備は終わり、後はテント張りなどの本格的なセッティングだけとなった。 一人もずぶ濡れでないものはいないし、ワックスもメイクも台無し。でも、誰一人嫌な顔はしていなかった。一様に爽やかな笑みを浮かべ、俺を待っていてくれている。 そして、同じように晴れやかな笑みを浮かべて俺も前に出た。 「皆。俺の我が儘に付き合ってくれてありがとう。もうやれるだけの事はやり尽くした。グラウンドの水も抜けた。本当にお疲れ様」 そこで俺は、自分で空けた大穴を見やる。 「最後の後始末はあの大穴だ。では皆…」 その声に呼応するように、皆が大小様々なスコップやシャベルを掲げる。そんな愛すべき皆に、俺は叫んだ。 「最後の宴じゃぁぁ!」 『うぉぉぉ!』 同時に、一斉に穴に向かって突撃。我先にと穴を埋め始める。そんな光景を見ながら、俺はふと空を見上げた。 なぁ、運命なんて本当に存在するのかな。マイケルジョーダンじゃないけどさ、もし本当にあるってんなら… パァー…雲の切れ間から差し込んだ光。 「運命よ、そこをどけ。俺が…俺達が、通る」 いつの間にか、雨は上がっていた。
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