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『ちなみに若さとはあきらめない事でもある』
六月六日
碓氷火塚
グラウンド
「感無量なり」
いろいろあった。とにかくいろいろあった昨日。今までの紆余曲折。全てを胸に秘めた男が、人で賑わう朝のグラウンドを見た感想だ。というか俺だ。
梅雨の季節の中に舞い降りた奇跡の体育祭日和、今日。普段慣れない口調に挑戦しようとしてあーもうやめた。
「もうお客さん入ってるよ」
「そうですね」
生徒会として視察中なため、とてもご機嫌な飛鳥先輩の姿を見る事が出来る。ははー眼福眼福。体操着姿も眩しいでござる。
「…なんかキャラ変わったわね」
残念な視線を向けてくる同じメンバーのさつき。今日は長い黒髪をなんとツインテにしている。俺はポニテorサイドポニー派に属するため萌えないが、他党の大きなお友達がカメラを構えている事に気付いているのだろうか。
「くーっ!やっと出番やで!」
昨日もちゃんとお手伝いしてくれたのにその様子全カットの不憫のアイドル、朧先輩。
「いっそイロモノ狙ったら増えるんじゃないですか?」
「はいさーい!」
「ごめんなさいやっぱやめてください色んなとこから怒られますねこれ」
あまりにもハマり過ぎなので却下。よし、この絡みできっと先輩の出番は増えただろう。やったね先輩!出番が増えるよ!
「ふっふっふ。今のうち今のうち」
そして一番問題があるのがこの人。我が姉にして甘々な存在。帆乃火姉さん。
俺達二人は生徒会ということで燐火よりも早く出て来たのだが、(火織姉は開会式まで寝るそうだ。昨日で疲れたらしい)玄関を出るなり腕を組んで来て、離そうとすると
「今日は敵チームだから今だけ!」
とガッチリホールドして離してくれなかった。その延長線上で、今は手をつないでいる。おかげで様々な方面から視線が痛い。今すぐ姉弟です!と叫びたい気分だ。
「ほら姉さん、そろそろ」
「いーやー!」
「この辺にしとかないと、そろそろあいつが…」
とまあ俺のセリフがフラグにならない方が難しく。
「何やってんのよ!」
ほら来た。家畜の安寧と虚偽の繁栄を楽しんでいたせいで、1メートル級巨人(奇行種)の燐火が進撃して来た。そのままヤツは高く飛ぶと、何故か俺にめがけてドロップキック。
「オラッ!」
ゴスッ
「ぐれんのゆみやっ」
腹に妹様のおみ足が突き刺さった俺は、女子高生のマカンコウサッポウのような格好で吹き飛ばされた。恥ずかしい。
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