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「も、もう!そんな事はどうでも良いの!とにかくこれ!」
真っ赤な顔のまま、シュシュをグイッと俺に押し付け、そのままクルリと回ると俺に背を向けた。
「ん!」
「…はい?」
「ん!」
無言でヘドバンのごとく頭を後ろに振る先輩。正直、真意がつかめなくて恐ろしいのと、髪の毛から物凄い良い匂いがするのとでドキドキだ。
「あのー…これを渡された俺はどうしろと?」
「…相変わらず、鈍いなぁ」
「はい?」
「何でも無い!だから!着けて!」
「え、えぇ!?」
「ヒヅが着けて!」
「ま、マジですか…」
どうしちゃったんだ先輩。俺に…着けて欲しいだなんて。
「わ、分かりました…変になっても知りませんからね」
全く意図がわからないが、とりあえず今れた通りに着ける。
「せ、先輩…どうですか?」
「え?だってまだ何も……」
不思議そうな声を出した先輩が振り返る。するとそこには。
ギリギリの長さの髪の後ろをシュシュで縛った俺 ×1
「お前が着けるんかい!」
「おやくそくっ」
本日三度目くらいのフェイススライディング。そろそろ体育祭前に体力無くなりそう。
「そうじゃなくて!ヒヅが、『私に』着けてって事だったの!普通わかるでしょう!?」
「ご、ごめんなさい……」
そうか、普通は分かるのか…俺はなんとも悲しい気持ちのまま、先輩の綺麗で指通りの良い髪を束にする。ここで選択肢だ。
先輩の髪型をどうする?
→
ポニーテール
サイドテール
「悩むっっ!」
「ヒヅ?ちょっと急がないと開会式始まるよ?」
俺が趣味丸出しの葛藤をしていると、先輩から催促の声。
(ここは…)
そして俺が選んだのは…
「えへへ、サイドで縛るなんて初めてだなぁ」
「そうですか。良く似合ってますよ」
サイドテール。俺の大好きなサイドテールにした。下ろしている感じが堪らないね。
「じゃあ、時間ですし戻りましょうか」
「…待って!」
俺が踵を返そうとした瞬間呼び止められる。何だろうと思って後ろを振り向くと、
ぎゅ…
目の前に顔があった。と、認識した時には既に先輩の体は胸の中に収まっていた。
「せせ、先輩…?」
「話しかけないで。今充電中なの」
真剣さと快楽を足して2で割ったような顔つきの先輩。もう意味わからん。
「うーん。落ち着く…」
柔らかいアレやらアレを正面から受け止めて良い匂いのコンボまでついている。俺がKOされないのが不思議なくらいだ。
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