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「ほ、ほら!そんな事してる間に皆集まり始めてますよ!」
「あちゃー!私の言葉とかあるのに!」
さっきまでの謎の良いムードは何処へやら霧散し、ロマンもへったくれも無いまま昇降口へと走る。
「遅い!何やっとったんや!」
「ごめんなさい!今すぐ準備します!」
「もう整列は終わるわよ?早く体育祭委員と前に並ばないと」
「うう…さつき、ごめんね…」
二人して年甲斐もなく怒られ、列に並ぶ。ふと見上げた快晴の空。校舎の屋上にチラリと何かが見えた気がするが…
(長かった)
徐々に声を抑え始める生徒達。
(種目決めから始まって)
しかしその中には秘めたる激情が見て取れる。肌で感じられる。
(先輩の事件を解決して)
そんな中、体育祭実行委員長にして、生徒会会長である飛鳥先輩が、マイクを持って立ち上がる。
(雨という運命に勝って)
最初は前列の小さなどよめきだった。しかし、先輩が一歩歩くごとに歓声が大きくなる。
「そして…」
『ワァァァ!!』
今。体育祭が、始まる。
ーーーーーー
『劣等感の足跡part Ⅰ』
六月六日
原慎二
光台高校校舎屋上
「ふん…」
誰もが目先の準備に追われている中、私、原慎二は屋上からまるでゴミのように集まる馬鹿共を見下ろしていた。
恐らく昨日のことが伝われば、私はクビだろう。そんな事は分かっている。だから…
「せめて、最高のフィナーレにしてやる…」
もうそのための準備は出来ている。後は仮初めの平和を享受している馬鹿共に、思い知らせるだけだ。
「ふふ…ははは… あーっはっはっはっは!!」
その惨劇の愉快さを思うと笑いがこみ上げて来る。私はそのまま高笑いしながら、開会式でも始まるのだろう、馬鹿共の歓声をバックに誰もいない校舎へと消えて行った。
ーーーーーー
『戰(いくさ)の狼煙』
六月六日
碓氷火塚
グラウンド朝礼台横
カン…カン…
先輩が朝礼台を登る度に、一段一段叫び声が止んで行く。
『…私達は、賭けをしていました』
そして語り出す。
『大きな、大きな賭けです。何せ相手は…天でしたから』
『皆さんも不安だったでしょう。練習の成果が出せるのかとか、悩んだに違いありません』
『ですが、私達は…勝ちました。今日というこの日は、私達全員で勝ち取った物です』
『では始めましょう…体育祭』
『開幕だぁぁぁ!!』
『うぉぉぉ!!』
これが、カリスマ性。これが…佐々木、飛鳥…!
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