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(ふん…)
何も言わずに去って行く後ろ姿を見ながら、あたしは面白く無いので鼻を鳴らす。
(見てなさいよ)
負けず嫌い上等。一位になってヒヅ兄を見返してやるんだから。
「あらー?そこにいるのは碓氷さんではありませんかー?」
「…げ」
だけど、嫌な奴に捕まった。
「私のレーンにはあなたがいるのね!ほほほ!」
名は白金莉子(しろがね りこ)。嫌味なお嬢様を絵に書いたような人間で、悔しいけど可愛いし、小さい頃の英才教育がなんたらでいろいろできる。
『きゃーリコ様ー!』
『頑張ってー!』
「…うざ」
その性格もさることながら、問題は取り巻きだ。あんなのの何が良いのか知らないが、お嬢様を勘違いしたのであろう変なのがいつも周りを取り巻いている。そしてなぜか白金にライバルだかなんだかで目を付けられてるあたしにうるさい。とにかくうるさい。
「この100mが、私達の戦いの天王山ですわ!今度こそ私が…」
よし、靴紐も結び直したし、これで完璧だ。緊張も無いし良いかんj
「ちょっと聞いてますのあなた!?」
「…何よ白金。負け続けに天王山も何も無いよ」
「キーッ!この私に話しかけられたと言うのにその打ち上げられたマンボウのような顔はなんですの!?」
「…はぁ。例えが芸人だよ」
「溜息!?ちょっと失礼にも程がありますわよ!」
「…あんたはいっつも元気でいいね」
「そ、そうかしら?ほはほ!」
「…チョロいなぁ」
「ウキャーッ!」
『いけませんわリコ様。そのままではお山の大将。もとい猿山のボスになってしまいますよ』
「そ、そうね冷静に…ってちょっとあなた気付いたら結構失礼な事言ってませんこと?」
『『さぁ…』』
「…」
あたしはよくあるコントをガン無視すると、もう一年生が走り出しているコースに集中した。
「ってまた無視ですの!?」
はずだったのだが妨害に合う。
「あなたとの勝負の話ですわ!現在戦績は75戦74敗1無効試合!負けていられないのよ!」
ただでさえヒヅ兄の事を考えるだけで頭が一杯なのに…
「だから、今度の100mに勝ったら…あなたのお兄様の連絡先を頂くわ!」
「…残念だけど、あんたは貰えないよ」
そうだ。私がこいつを嫌いな理由二番。それはヒヅ兄に対する高圧的な恋愛感情だ。
それに。
「おい燐火、何を揉め…って、莉子か」
「お、お兄様…」
そして一番は、この二人が何故か知り合いである事だ。
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