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『ぜーったいに振り向かせてみせますわ!覚悟しなさい!』
…それからというもの。
『ほら『お兄様』。私はここですわよ!』
『俺はお前の兄になった覚えは無いんだが…』
『お兄様!』
『よう莉子。じゃあな』
『くっ!つれない…!』
どうもチヤホヤされてきただけに、一歩引いた相手に惹かれたらしい。単純!まぁ、救いとしてはヒヅ兄は特に興味を持ってないという事だけだろうか。
「ふふふ…苦節数ヶ月に渡るこの争い、ついに決着ですわ。最高の舞台です」
そして今、一年生女子。私達のレーンになった。バッと手を上げる白金。と、同時に、
『リーコ!リーコ!』
莉子コールがあちこちからかかる。ってこらバカ兄!調子に乗ってあんたもコールしてんじゃないわよ!
(もう…)
こうなりゃヤケよ。アウェー過ぎるのよ。
そう思ってクラウチウングスタートを構えた瞬間。後ろから暖かい、あたしの大好きな声が聞こえた。
ーーー何弱気になってんだよ、燐火。
…うるさい。バカ兄
ーーーははっ。それぐらい元気なら大丈夫だ。
…あたし、勝てるかな。
ーーー今まで一緒に練習してきただろ?それを信じろ。それに。
俺の妹が、自慢の妹が負けるわけ無いだろ?
…あたし、行くよ。
迷いが消えて、体が軽くなるのが分かる。
《位置に着いて!》
ーーーここからはお前のステージだ。
《よーい!》
「ぶっちぎって来い」
《パァン!!》
ーーーーーー
「ま、負けた?私が…負けた?」
「か、勝った!」
それは一瞬だった。俺と話してる間も集中を保っていた燐火は、スタートダッシュを完璧に決め、風になった。二位以下などその圧勝に華を添えたに過ぎない存在にするほど、あいつは輝いていた。何はともあれ…
「燐火」
「…バカ兄」
パァン!!帰ってきた燐火と盛大なハイタッチ。そこかしこから拍手が聞こえる。
え?俺?走ってきたよ?二位という堅実極まりない順位だしぶっちぎりもないし盛り上がらなかったよ?…うん。
『はいはーい!我が校を代表すると言われる兄妹の写真を一枚!』
写真という腕章を付けた生徒が飛んでくる。
「よし撮るか燐火」
「え、えぇっ!?って何肩組んでんのよキャァ!!」
パシャッ。
写し出されたであろう俺たちの写真は、なんだかんだ言っても満面の笑みの二人が写っている事だろう。
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