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「くっ!こんな…こんなもの!」
キッと俺達を睨むと、目元を擦りながら足早に走り去る莉子。だが、急に立ち止まって振り返り、叫んだ。
「覚えてなさい、碓氷さん。いつか必ずお兄様は…!」
そこまでいうと、何か話しかける間も無く再び去って行ってしまった。
「…悪い事したのかなぁ俺」
どうも年下の女の子に嫌われるのは慣れない。いや別に同年代だから慣れてるとかじゃないけど。
「…しょうがないんだよ」
どこか遠くを見つめる燐火がボソッと呟く。
「欲しい島が一つあった。しかし他に欲しい人が何人かいた。全員で分けるわけにはいかない。でも戦争もしたくない。だから発想を変える。島に選んでもらおう。そんな感じなんだよ」
「…成る程分からん」
どうもこう…抽象的な話は苦手だ。とにかく、領土を欲してるのか君は。戦争イクナイ。
「わかんなくてもいーよーっだ!!」
でも、楽しそうにあっかんべーをしてクラスに駆けて行く燐火をみていると、そんな小さな事はどうでも良くなってくる。とりあえず、おめでとう。
ーーーーーー
《第三競技:ムカデリレー》
「…いいなぁ」
三年生の招集場所から離れた陣地。楽しそうに写真を撮る妹と弟を見て、ボソリとそんな言葉が口に出る。
「ほーのーか?」
「きゃっ」
ポーッとしてたら、突然後ろから抱き着かれてしまった。 声、この匂い、とにかく大きい大きさ、柔らかさ。これは…
「って、どうせあっちゃんでしょ?」
「ばれたか」
スッと離れたので後ろを向くと、体操着姿のあっちゃんが立っていた。
「ボーッとしちゃって。さっきから写真とか撮られてるの気付いてる?」
「えぇ!?」
「それに朧が話し掛けてたのにも気付いてる?そこで落ち込んでるんだけど」
「ブツブツ…どうせウチなんか」
「わわ、朧ちゃん!ごめんねぇ!」
確かに招集場所近くの茂みに体育座りの朧ちゃんが確認出来たので駆け寄る。…意識してみると、私達を捉えるカメラは多いかもしれない。
『貴重な体操着姿だぞ!?写真部の名誉にかけて撮らねば!』
ちょっと怖いけど…無下にするのも酷いよね。なので私は特に注意もせずに撮らせる事にした。
「復活!!」
そしてウチのエース、朧ちゃんが復活。その運動神経は頼りになる。
「時間だね。よっし、じゃあねん帆乃火、朧」
颯爽と去って行くあっちゃん。やっぱりカッコいいなぁ。そして、やっぱり…
「負けたく、ないなぁ」
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