3225人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーーーーー
「準備はええか皆?」
『はーい!』
入場門をくぐり、既に足は紐で結ばれている。私が走るのは六走目。グループは先頭が朧ちゃん、二番目が私、後ろに三人だ。
ルールは縦に五人でグループを作って横の紐に足を結んで200mトラックを半周する。男女合同だが、流石に同じグループ内に男女は無い。
「気合い入ってるね、朧ちゃん!」
いっちに、いっちにと足踏みを揃える練習をしながら、先頭の朧ちゃんに声を掛ける。
「当然!ここで勝てば出番が!」
フンスと鼻息が漏れそうなくらい奮起している朧ちゃん。…でもね、負けたくないのは私も一緒なんだよ。
《スタート!》
「始まったで!気ぃ締めぇや!」
回ってくる一走目。一組は…三位!それなりだ!
「…」
同時にあっちゃんのいる二組の順位を見る。五位。全然行けるよっ!
あっちゃんが走るのは五走目。直接対決が無かったのは残念だけど、どこかで当たらなくて良かったと思う自分がいる。
「四走目や!」
そうこうしている間にレースは動く。もう走順は四番目に渡っており、順位は一位が五組、二位が私たち一組、三位が三組、四位が二組、五位が四組。お互い一つづつ順位を挙げて後半戦へ。
「っ!行くよっ!」
『いちに、いちにっ!』
「…速い!」
あっちゃんグループに渡った瞬間、勝負は動いた。それまで僅差だった差を一気に詰め、抜き去る。これにより二組は一組に迫る三位になり、とうとう私達へのパトンパス間際まで勝負はもつれ込んだ。
「頑張ってぇ!」
『会長の御胸が揺れる!』
『男子うっさいキモい!』
そしてお互いのバトンパスが終わり、やや二組リードでスタートした、瞬間。
『うぉっ!?』
「ちぃっ!」
差が詰まって焦っていたのか、二組の男の子達が体制を崩し派手に転倒。三位以下を巻き込む大混戦に。でも、それを避けようと頑張った朧ちゃんに後ろの私達が着いて行けず、大混戦の少し先で私達も倒れる羽目に。
「痛ってて…だ、大丈夫か皆!」
『行けるよっ!』
「うん!私もって…」
「どうしたんやほの…か」
もつれ込むように倒れた私達。横を向いて倒れている朧ちゃんに覆い被さる私。その顔の距離、推定七センチ。
「「あ…っ」」
朧ちゃんの少し勝気に整った顔が目の前に。驚きに見開かれた口と目は、その赤い頬と合い俟ってとても艶かしい。
…何だろう。レースの途中なのに…凄く、ドキドキする。
最初のコメントを投稿しよう!