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退かなきゃいけない。ここでこんな事してる場合じゃない。
だというのに、体は全く言う事を聞いてくれない。
スッーー
「ーーぁ」
ほぼ同時。お互いがお互いの頬に手を伸ばし、サッと指の腹で撫でる。ゾクゾクと、感じたことの無い快感が身体を巡る。
『お、おぉ…』
『あれはやべぇ…エロい…』
周りからの雑音も気にならない耽美な空間。
溺れてしまう。このままじゃ。
「ほの…か」
「違うでしょ?今は…」
「『お姉様』。よ」
口から出るのは発した事も無い言葉。そして二人が重なる…
ーーーコツン
瞬間に、目の前を一つの小石が横切った。と、同時に急速に世界が現実を取り戻し、私達は正気に戻った。
「はっ!?何をしとったんやウチは!?まだ行けるで!」
「う、うん!まだ後ろは団子だし、あの濃かった時間が一瞬だったなんてっ!」
慌てて再び走り出す。私達の様子を固唾を飲んで見守っていた人々は、何故か溜息を漏らしたが、私はその中にスーッと消えて行くその二つの後ろ姿を見た。
(あれは……ひーくんと火織ちゃん)
ひょっとすると、さっきの小石は二人が関係しているのかもしれない。そんな優しさをもつ二人に恥を欠かせないよう……
「いちにっいちにっ!」
全力で、駆け抜ける。
ーーーーーー
「く~~っ!、悔しい!」
「……うん。悔しいね」
結果は、二位だった。最後に巻き返しはしたけれど、一位を倒れた時に巻き込めなかったのが響いてしまった。
「……くっ」
あっちゃんのいる二組は三位。頑張っただけあって向こうも悔しそうだ。
……さて、これで一つ競技が終わったわけだけれど、ムカデリレーが残してくれたものはクラスの団結と…
「……」チラッ
「……!」プイッ
何とも言えない、背徳感だけだった。……私は、断じて百合ではないよ?
ーーーーーー
《第四競技:玉入れ》
『クソッ!味方がやられた!』
みなさんこんにちは。お久しぶりです。新垣奏です。
『馬鹿野郎!これは仲間の籠だろう!』
今日、私達は絶好の体育祭日和だと言う事で、体育祭を、楽しんでいます。
『お、女の子なんだから言葉遣いを…』
ただいまの競技は、玉を相手の籠に入れるというシンプルな玉入れです。
『チィ!新兵が前線に出るなとあれ程!』
それが。
「どうしてこうなったのかなぁ……」
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