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まさに女同士の激しい争い。這いよる混沌の方がいくらかましかという程…醜いよ。女の子なんてこんなものなんだよ。ごめんね火塚君…
そんな一人だけ勢いに乗れずにいる私に、
ドスっ
まさしくそんな音がする程、何処かからの玉が重く衝突した。
「だ、大丈夫奏!?敵のRPGが…」
琴がすかさず駆け寄ってくれる。がしかし、私の頭の中はただ一つの感情で一杯だった。
「……ゃ」
「…え?」
そう、ぷっつん。
「どこのどいつじゃぁワレぇぇ!!」
「ひいっ!か、奏!マズイよ男の子に見せられない顔に!」
「男がナンボのもんじゃぁ!敵も同じ様に晒したらぁぁぁ!!」
そう。私は鬼。復讐に包まれた鬼。
「ふんっ!」
私は手短に自分に当たった玉を掴み取り、全力で振りかぶり投球。
『きゃぁ!』
隣のクラスの女子、一人撃墜。
「ヒャッハー!!」
完全に女世紀末と化した私は次の玉を求めて突撃。と、その先に。
「だからさ、なんでお互いの陣地すぐそばにあるのにそこに入れないで相手を狙ってんのかって話だよな。さっさと決めちゃえば…おっと」
「へ?」
サッーーー
「「あ…」」
あ、ありのまま今起こった事を話すね。完全に女を捨てた表情をした私は、少し先に転がっていた玉を拾おうと突撃した。でもそこは元々私達のクラスの陣地付近だったらしく、玉をたまたま拾おうとしゃがみこんだ火塚君と手が触れ合った。な、何を言ってるのかわからないかもしれないけど、私もよくわからないんだ。
頭がどうにかなりそうだよ…凄すぎる皆のノリとか、玉を思いっきり当てられる事とかそんなチャチなもんじゃ断じてない、もっと恐ろしい物の片鱗を味わったわ…
そう。この胸の高鳴りこそそれだ。 目を見るだけで顔が赤くなるのがわかる。
「あー…奏?」
「ひ、ひゃいっ!」
「お、おう」
突然呼び掛けられ、びっくりしてものすごく飛びのいてしまった。同時に手から離れる温かくて柔らかい感触。
「こ、これ探しに来てたんじゃないか?必死で」
「あ…」
名残を求めて伸ばしっぱなしとなっていた手に、優しく玉が乗せられた。…ありがとう。でも必死では余計だよ?
「…うん。ありがとう」
「あぁ。時間ならまだあるっぽいから」
そして、恥ずかしさから振り返らず走り去ろうとした背中に、
「頑張ってな、奏」
「…うん」
勇気の翼を貰い、私は再び戦地へと舞い戻った。
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