1人が本棚に入れています
本棚に追加
*
世の中には『予言』という言葉が存在する。
でもそれは人間の発した言葉で、神が発した言葉ではない。
悉く予言は外れてきた。
期待することをやめた私は、毎日がつまらないものに変わっていった。
同じ毎日、同じ時が流れていく。
私は訴えた。
つまらないよ、つまらないよ、とリストカットなんかしたりして。
誰も気付かない。神でさえも、人間でさえも、誰も気付かない。
そんな退屈な時間を埋めてくれるのは、本だった。
字を読んでいると退屈な時間を忘れていられる。
たまに、どうしようもなくつまらない本がある。その度にリストカットを繰り返した。つまらない、つまらないよ、と。
退屈な日常を埋めてくれる本を探すのは、私の日常になっていた。
いつもの帰宅途中に寄る、個人で経営している古本屋で本を探す。
「おじさん。何か面白そうな本入った?」
最近はおじさんに本を選んでもらっている。
おじさんの選ぶ本は確実に面白いということに気付いたからだ。
「そうさねぇ。昨日、これを置いてくれって人が現れてねぇ。読んでみるかい?」
おじさんの手には真っ黒い本が握られていた。
「個人出版?」
「いや、それがねぇ。欲しいと言った子に無料であげてくれ、と言うんだよ。必死で頭を下げるもんだからつい了解してしまったよ」
「内容は?」
「まだねぇ。読んでいないんだよ」
「ふうん」
退屈しのぎに読んでみるか。
「これ、もらっていい?」
「ああ、いいとも。ただし、感想を訊いてくれと頼まれているんだ。読み終わったら感想を教えてくれ」
「わかった」
私は古本屋を出た。
最初のコメントを投稿しよう!