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次の日の朝、目が覚めると、夏の陽射しが私の顔を照らしていた。
額に汗が浮かびあがり、すぐにシャワーを浴びることを決意した。
昨日の読み掛けていた小説は、夜のうちにすべて読みきった。
幸い、といっていいのか、リストカットをすることがなかった。
今日はあの真っ黒な本を読むことにした。
シャワーを浴び、制服に着替えると、台所に置かれたお弁当と、サランラップで包まれたオニギリを持って家を出た。
外は暑い。
蝉の鳴き声がより夏を意識させ、暑さを倍増させる。
私の家――ボロアパート――を背に、私はオニギリを食べながら歩きだした。
学校までの道のりは、近くの駅に歩いて向かって、その駅から六つの駅のところで降りる。駅の近くには学校専用のバスが出ているため、学校までは数分掛けてバスで向かう。
その間に、すでに汗でワイシャツの襟が濡れている。
その暑いという感情も、本を読んでしまえば忘れてしまう。
オニギリを食べ終わると、駅に着いた。
定期券を通し、いつもの時刻の電車に乗り込んだ。
電車が発車すると、私は鞄からあの本を取り出した。
中身に目を通していなかったため、それが小説とも、漫画本ともわからなかった。
本を開くと、字がいっぱいに広がっていた。小説だ。
目次も、タイトルもない。奇妙な本だ。
『倖田太一』
冒頭はそう書かれていた。
同名のやつが隣のクラスにいたな。
『イジメに遭ってから、倖田という男はすべてを投げ出したくなった。』
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