プロローグ

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唇が私を捕らえる。 「……っ……や…めて……」 私の声を聞いたあなたは妖しく微笑む。 「やめて欲しいなんて思ってないくせに」 必死で隠そうとしている本心を見抜く、その目が大嫌いだった。 ――あなたが悪魔だったとしたら、なんて綺麗な姿をして、なんて非情なんだろう。 今から思えば、初めて会ったあの日から、あなたは心の中に入り込んで、それはまるでがん細胞のように私を蝕んでいった。 無遠慮に踏み込んでくるそれを、止めることができたらよかったのに……。
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