15072人が本棚に入れています
本棚に追加
/1610ページ
相変わらずですね。
一華さんには、謙虚と言いますか…自分の事を蔑ろにしているような一面があります。
立場上そうなる事も仕方ないのかも知れませんが、少しは自分の事も顧みて戴きたいです。
しかし、それは一華さんの優しさであり、良いところなのでしょう。
ですから、その件には触れずに微笑んで――自然を装って、話を促します。
「一華さんのお話は、聞かせていただけないのですか?」
問いかけると、片方だけ覗く切れ長の目を大きく見開く一華さん。
続いて動揺したように視線が宙を泳ぎ、頬が朱色に染まります。
「わ、私の話など、大して面白味もありませぬが――///」
「それでいいですよ。聞かせて下さい」
「うっ――」
動揺を露にした声に頷けば、呻き声が返ってきました。
先程までは頬だけが赤かったのですが、今は耳まで真っ赤になっています。
こうなると、冷静で、ビシッとした仕事ができるカッコイイ男。といった雰囲気一華さんも、可愛らしくなりますね。
普段の一華さんですと、お兄さんといった感じがして私も頼ってしまうのですが、今は頭を撫でてあげたくなるような可愛らしさです。
「その、私は――姫と離れている間、勉学などに励んでいた…訳ですが――…」
先ほどまで饒舌だったのが嘘のように、たどたどしく話始めた一華さん。
話もあまり要領を得ず、分かりにくいのですが一生懸命さは伝わってきます。
二竜さん達の話の時はそういう事も無かったのですが、自分の事になるとこうも不器用になるのですね。
本当にもう――可愛らしくて、気づけば顔が笑っていました。
でも、これは笑うなという方が無理な話だと思うのです。
「私は、姫がいなくて――寂しかった…です///」
普段はクールな一華さんが、こんなに可愛らしい告白をしてくれるのですから、ニヤニヤせずに居られる筈が無いのです。
最初のコメントを投稿しよう!