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「ちっ、あんな上玉隠しやがって……郁斗の奴、後で覚えてろよ?」
不機嫌な声と同時に、漂ってきた不快な臭い。
見ると、そこには煙草を手にした保が。
「保……仮にも保険医なんですから、保健室で煙草を吸うのは止めるべきでは?」
「ここは、俺の城だ」
「違うでしょう?学校の施設です」
「あ?知るか」
無責任な言葉を吐いて、窓際へ移動する保。
煙草を吸って吐き出すその動作が、妙に様になっています。
はあー。
相変わらず、ですね。
その姿に、口から溜め息が漏れました。
緩いというか、好き放題というかー…。
そう、自由人。という言葉がピッタリ当てはまるような人。
でも本当は……
本当なら、こんな所にいるよりも――
「おい、楓」
「――何か?」
考えに浸っていたせいで、反応が遅れてしまいました。
顔を上げれば、そこには真剣な目をした男が。
思わず身構えたのですが、
「さっきの奴の名前は?」
「え?あぁ、氷城……雪?と眞鍋夢人ですよ」
「眼鏡の方が氷城雪か?」
「えぇ」
何を言うかと思えば、そんなこと。
はぁー。と再び出た溜め息。
何だか、疲れてしまいました。
「楓」
「はい?」(黒笑)
「無理すんなよ」
それに目を見開いて、出てきたのはやはり溜め息でした。
まったく、この人は……
「お気遣いありがとうございます。兄さん」
苦笑を返して、俺も保健室を出ることにします。
さて、生徒会室に戻りますか。
―楓side,end―
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