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「はぁ…はぁ…」
やっとここまで来たんだ。
8月10日
第××回硬式テニス全日本ジュニア18歳以下男子シングルス決勝戦
今、ネットを挟んだ向こうには今まで一度も勝てなかった相手がいる。
今までと唯一違うことは、そいつの表情に余裕がないこと。
Set 1-1
Game 6-5
後、1ゲーム…いや、正しくは後1ポイントか。
ここまで来るのに滅茶苦茶時間がかかっちまったな。
それだけに興奮が抑えられねえや。
けど、心の中は自分でも信じられない程冷静だ。
奇跡だとも思ったが、もしかしたら、これも必然だったのかもな。
ふと客席を見てみると、由夏を見つけることができた。
どうやら、目をつぶって、胸の前で固く手を握っているようだ。
目、開けろよ。
滅多にない俺の晴れ姿が見られねえぜ?
その思いが通じたのか、今、目をゆっくりと開けた。
「15秒経過!!」
はいはい。
見てろよ、由夏。
「しゃあ!!ラストー!!」
俺、やってやるからな。
全てはこの日のために――――――――――――――――――――
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