第一話「幻想郷へ」

2/12
前へ
/15ページ
次へ
僕はどうなったのかな――― 気を失って、どれくらいの時間が経っただろうか。徐々に意識を覚醒させる中、僕は花の匂いを感じた。同時に土の匂いと、暖かな風、小鳥の囀り――様々なものを感じた。 「………ぅ………ん………?」 重たいまぶたを開けると強烈な光が目に差し込み、僕はまぶたを少し閉じる。 気を失っている間に朝になってしまったのだろうか。そう思いながら倒れた体を、半身だけ起こす。 眩しい光から解放され、僕は変わりに違う景色を見た。 色々な意味で違う、景色を――― 「……ここ……どこ……?」 僕が居るのは少し小高くなった丘かもしれない。周りには花が生き生きと咲いており、更に正面を見ると一面に広がる、ヒマワリ畑。見たことないくらいの、広く広く、ただ咲き誇るヒマワリ達。 少なくとも、僕は家の近くにこんな場所は知らない。夢にしては現実的過ぎる。 混乱していると、僕に影が重なる。 「あなた、誰かしら?私の畑を荒らしに来た不届き者?」 同時に、背後から女性の声が聞こえる。 声には明かな殺気。 「まぁ良いわ。どちらにせよ――」 僕は恐る恐る背後へ視線を移す。 そこには、黄色のスカーフが着いた白いポロシャツ、赤と赤茶色のベストと長いスカート、草木の様な緑色の髪、淡い紅の瞳、そして白い日傘をさした、まさに美女が居た。 「――この私、風見幽香の畑に入ったのだもの。生きて帰れるとは思わない事ね」 そして、僕は人生初の死の宣告を受けたのだった。  
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加