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僕はどうなったのかな―――
気を失って、どれくらいの時間が経っただろうか。徐々に意識を覚醒させる中、僕は花の匂いを感じた。同時に土の匂いと、暖かな風、小鳥の囀り――様々なものを感じた。
「………ぅ………ん………?」
重たいまぶたを開けると強烈な光が目に差し込み、僕はまぶたを少し閉じる。
気を失っている間に朝になってしまったのだろうか。そう思いながら倒れた体を、半身だけ起こす。
眩しい光から解放され、僕は変わりに違う景色を見た。
色々な意味で違う、景色を―――
「……ここ……どこ……?」
僕が居るのは少し小高くなった丘かもしれない。周りには花が生き生きと咲いており、更に正面を見ると一面に広がる、ヒマワリ畑。見たことないくらいの、広く広く、ただ咲き誇るヒマワリ達。
少なくとも、僕は家の近くにこんな場所は知らない。夢にしては現実的過ぎる。
混乱していると、僕に影が重なる。
「あなた、誰かしら?私の畑を荒らしに来た不届き者?」
同時に、背後から女性の声が聞こえる。
声には明かな殺気。
「まぁ良いわ。どちらにせよ――」
僕は恐る恐る背後へ視線を移す。
そこには、黄色のスカーフが着いた白いポロシャツ、赤と赤茶色のベストと長いスカート、草木の様な緑色の髪、淡い紅の瞳、そして白い日傘をさした、まさに美女が居た。
「――この私、風見幽香の畑に入ったのだもの。生きて帰れるとは思わない事ね」
そして、僕は人生初の死の宣告を受けたのだった。
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