第一話「幻想郷へ」

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「げんそう……きょう………?」 聞き慣れない単語。地名なのだろうか? 「そう。幻を想う郷と書いて、幻想郷」 「幻想郷……っていうのは一体……?」 呟いた疑問に答えたのは紫さんだった。 取り敢えず、その幻想郷というものを詳しく知る必要があるみたいなので、紫さんに聞いてみる。 「幻想郷というのはね、あなたが住んでいた世界の陸続きに存在する世界。だけどあなたの世界から幻想郷には来れないし、幻想郷からあなたの世界には行けない。まさに幻のような場所。それが『ここ』よ」 全くわからない。 陸続きなのに行き来できない場所?存在しているのに幻のような世界?言葉遊びなのだろうか………唯一、理解できたのはたった一つ。 「……僕が今いるこの場所が幻想郷で、元の世界に僕は帰れない……?」 「正解♪」 何故か楽しそうに答える紫さん…… 元の世界に帰れない……?冗談じゃない。あっちにはやり残した事だって沢山ある。帰らなきゃ……… そこまで思考してから、僕はある事に気付いた。何故、普通なら来れない場所に僕は今こうして居るんだろう、と。 「ふふふ、良い頭をしてるわね。頭の回転が早いのは良いことよ」 まるで全て見透かしたようにそう僕に伝える紫さん。やっぱり、色んな事を知っていそうだ。 「取り敢えず、何故あなたがここに居るかの質問ね。それは私の『能力』のおかげよ」 「……能力………?」 また意味がわからない。 まるで自分には特殊な力がある、みたいな言い方。そんな非現実的な事があるわけない。 「あなたも見たでしょう?幾つもの『目』がある暗闇の空間」 「……忘れたくても忘れられませんよ……」 まさに恐怖の塊だったし……  
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