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「あれは『スキマ』っていうのよ。私の能力、<境界を操る程度の能力>はね、ありとあらゆるものや世界の境界を操る事ができるのよ」
スキマ、能力、境界………
一言で感想を述べれば、この人大丈夫?だ。正直、違う場所に居た事やスキマと呼ばれた変な空間、一瞬で傷を治す事ができる光景を見れば信じたくもなる。だけど僕は断絶、ありえないと言い続ける。
非現実的なものを理解したら、それこそ僕が非現実的な存在になる気がした。だから否定したい。
「だけどこれも現実なのよ?」
「!?また考えてる事が……!?」
「今私の考えとあなたの考えは、私の能力によって境界線が無い状態よ」
つまり両者の考えてる事は共有されている訳よ、と頭の中に彼女の声が響く。
あまりの出来事に言葉が出ず、驚きの表情を隠せない僕を見て、ふっと笑う紫さん。
「もう気付いてるかもしれないけれど、あなたを幻想郷に連れて来たのは私よ。もちろん、能力を使ってね」
理由はただ一つ、と左手の人差し指だけを立てる紫さん。
「……『面白そう』だった、からよ」
渡って来れない世界――幻想郷――
そんな世界に僕をわざわざ連れて来たんだ、何か特別な理由でも有るんだな。
――そう思っていた自分が恥ずかしい。
「……どうしてこの人間はしゃがんで泣き出したのかしら……」
「ふふふ、自己嫌悪というものよ」
何かもう色々と嫌になってきたな……
というかそれよりも!
「僕を元の世界に帰してください!」
元の世界にはやりたい事が沢山あったのに!早く帰って内職をしたいのに!
「うーん……出来ればすぐに帰してたんだけれどね………」
困ったように言う紫さん。
すっかりその能力とやらは使っていないらしく、考えがわからない分怖い。主に色々と意味を含んでいそうな『出来れば』という単語。
「……あなた、能力が発現しちゃっているのよね」
「……へ……?」
もう訳がわからないよ………
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