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こんな穏やかな顔で優しい声を出す将紀を見るのは初めてだった。
いつも私が「好き?」って聞いても「あぁ」なんて、適当な返事しかくれなかった将紀が、目の前で…しかもたくさんの人の前でこんな真剣に言ってくれるなんて信じられない。
「あか…ね?」
どんどん溢れる涙は、悲しみや痛みじゃなく温かくて幸せの涙。
私だって、伝えたい事がいっぱいある。それなのに胸がいっぱいで言葉が一つも出てくれない。
「あかね?」
また、将紀を信じていいのかな?
また、将紀と居ていいのかな?
数え切れないほどの不安はあるけど、それでもやっぱり私は将紀が大好きで、惚れた弱味でもなんでも……離れられそうにない。
目の前の将紀の胸に思いっきり飛び込むと、痛いくらいギュッと強く抱きしめてくれて、痛くても辛くてもここが私の居場所なんだって思えた。
「…将紀……?」
「なに?」
胸に顔をうずめながら名前を呼ぶと、私が大好きな少し掠れた声で返事をしてくれて、
愛おしい愛おしいその声を、ずっと私の為にだけ囁いていて欲しいって、心の底から思う。
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