劣等感と優越感

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金曜日の17時30分。 自分のデスクの上を片付けバックを持ってそそくさと立ち上がると、隣に座っている同期の由香里が視線を向ける。 「ねぇ茜、今日暇?」 「えっ、別に…何もないけど。」 「じゃぁ飲み行かない?あたし今日彼氏にドタキャンされて暇なんだよね。せっかくの週末なのにさ」 「いいよ。じゃぁ久しぶりに飲み行こっか」 由香里とは特別仲が良い訳ではない。 同期だからたまに仕事終わり飲みに行く事もあるけど。 会社からそう遠くない店に入り、グラス片手に久しぶりの女子トークに盛り上がる。 「あれ?由香里の彼氏ってあの年下の学生君だっけ?」 「違う違う、あれはもう別れたよ。今は28歳の青年実業家!」 「マジ?凄いじゃん。」 「うん、大人の男って感じで格好良いの。でも仕事忙しいからなかなか会えないし、ドタキャンもたまにされるんだけどね。」 「そうなんだぁ」 笑顔で相槌を打ちながらも、心の中ではまた男変わったのかと嫌味が零れる。 だけどいつも恋愛をしている由香里を、ちょっとだけ羨ましく思う。 そりゃあ私だって彼氏が居るしそれなりに幸せだよ? だけど、いつも目を輝かせながら新しくできた彼氏の話しをする由香里を見ていると、そんなトキメキはもう随分と感じていないなって思う。
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