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早紀姉は僕の性格を僕以上に知っている。
それなのに、それなのにそんな危険な事をするだろうか。
下手すれば、今頃僕のお腹の中に入っていたかも……。
「そんな難しい顔しないの」
色々と考えていた頭に綺麗な声が響いた。
早紀姉の顔が目の前にあって、早紀姉の甘い声が僕の耳を犯して。
細く白い腕が僕にねっとりと絡みつく。
そして、そこで僕は。
「あ」
気付いてしまった。
あのページを何度も何度も、無意識に開いてしまったのは。
「ああ」
きっと匂いのせいだ。
香水の奥の奥の奥で静かに揺らめく、早紀姉の体臭のせいだ。
「……」
あのページからはこの匂いがしてた。
他のページよりも強くて、濃くて。
「……」
その辺りで僕は『考える』なんて馬鹿馬鹿しい行為をやめた。
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