《序曲》

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「好きな人が出来た」 部屋に入って直ぐに彼はそう言った。 その様子は気後れするどころか、どこか誇りに満ちている様だった。 言葉を失うとはきっとこんな時に使うのだろう。 「え…?」 と驚きの声をあげ、山本香(やまもとかおり)は手にしていたキーケースを足元に落とした。 聞きたいことは山程あるのに言葉が続かない。 それもその筈。目の前にいるのは誰でもない香の恋人で、今さっきまで「好きだよ」なんてメールを交わしていた相手なのだから。
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