1人が本棚に入れています
本棚に追加
"月影廊"と言えば、この街に出入りした事がある者なら、誰でも一度は耳にした事がある名だろう。
働いている娼婦も、金額も、なにもかも全てがこの街一番だと。
私は、月影廊で一番の娼婦だ。
その、一番の娼婦である桜華を偶然にも見る事ができた男達は、
『今、俺に笑いかけたぞ!』
『違う!俺だって!』
と、間抜けな顔で言い合いをしている。
その様子を見た桜華は、また笑顔を見せる。
『ほら、また笑った!』
『違うだろ!俺だって!………まぁ、どっちにしても顔が拝めただけで"夢"みたいだよ。』
……"夢"か…。
私は、心の奥にあるチクリと痛む場所に気付かないフリをして、ネオン輝く夜空を見上げた…。
.
最初のコメントを投稿しよう!