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「アニー。それで、この状況どう収拾つけんのさ?」
梅田がニヤニヤ笑いながら、腕立てをする一年生達を見る。
「このまま三百回できる奴がいれば、俺が責任を持って育てる!」
「そ、そっか」
すでに三人が床に這いつくばり、ダウンしている。
ま、そんなもんだな。
本当に根性のある体育会系なら、とっくに他の部に行っているはずだ。
俺は例外として。
「うーむ。けどアニー、俺は大事なことに気が付いたよ」
「何だ、梅田。言ってみろよ」
「この文芸部には、大事な役割の人がいないんだ。ていうか、アンズちゃんとアニーしかいないから当然だけど」
「ほう。その大事な役割ってーと?」
「それは『ツッコミ』さ、アニー。アンズちゃんは喋らないし、アニーはただ前に突っ込んでいくだけで、そのめちゃくちゃなアニーにツッコミを入れてくれる人がいないんだ」
「梅田、お前がいるじゃねぇか。結構頼りにしてんだぜ、お前のこと」
「いや、俺生徒会だから。ツッコミ入れるためにわざわざ来るのなんてごめんだから」
「なるほどな。つまり、常識人が一人はいた方がいいってことだろ?」
「ま、我等が才上学園には何故か変な奴ばっかいるんだけどね」
才上学園の数少ない常識人、梅田は言った。
「だが、この五人は駄目だ。アンズがむさいのは嫌だって言うし(俺は例外として)、こいつらには他に行くべき場所がある。誰か、本が好きでツッコミが上手な奴とか入ってきてくれたらいいんだけどなぁ」
俺が腕を組んで「う~ん」と息を漏らすと、突如部室のドアが開き、床に転がる男子生徒の向こうに、新たな訪問者が現れた。
「いや、ない。これはない。私は確かに文芸部の部室に入ったハズ」
来た。
梅田と同じような極めて常識的な反応をするその女子生徒を見た瞬間、俺はニヤリと笑った。
「いいタイミングじゃねぇか。おら、お前らバテたんならとっとと武闘派部活動にでも行って来い!ラグビー部とかオススメだぜ!」
力尽き床に転がる野郎共を部室から追い払い、「じゃ、俺もそろそろ戻らないと会長に怒られるから」と言って梅田が部室を出るのを確認すると、その女子生徒を招き入れ、目の前に椅子を置く。
「まぁ、座れや。ようこそ、文芸部へ」
女子生徒はきょとんとした顔で、とりあえず椅子に座った。
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