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「あ、あなたは昨日の新歓の。本当に文芸部だったんですね」
女子生徒はあからさまに嫌そうな顔で俺を見る。
何でだよ。
「おう、俺は三年の武田アントニオ。アニーって呼んでくれ!」
「中等部の時から先輩の噂はよく聞いていました。番長って呼ばれているとか」
「おう。ガタイがいいからか知らねーけどそう呼ぶ奴もいるな。別に番長でも構わないぜ」
「私、ああいうのはどうかと思うんです」
「は?何が?」
目をカッと見開き、俺を睨む。
「昨日みたいに人を蹴り飛ばしたり相手を力で押さえつけたりすることです。昨日のはパフォーマンスみたいでしたけど、先輩はよくそういう乱暴なことをしているって聞きました。相手が怪我したらとか、考えないんですか?」
思った通り、真面目ないい子のようだ。
それに、初対面の乱暴な大男にここまでハッキリ言う度胸も見上げたもんだ。
気に入った。
「ははは、そうだな。お前の言う通りだ。暴力はよくねぇ。できることならしない方がいいかもしれない。だけどさ、俺って馬鹿で、口じゃ上手いこと気持ち伝えられないからさ、昨日みたいにああやってボコり合うのがてっとり早いんだ。男は拳を交わして分かり合う馬鹿な生き物なんだぜ?」
「そんなの、喧嘩が好きな人の勝手な理屈です」
「ああ。だから、俺は喧嘩をしたい奴としか喧嘩はしねぇよ。相手の合意がなけりゃ、それこそただの乱暴だからな」
「そ、それでも、見ている方は冷や冷やするんです。だから……」
「ははは、お前いい奴なんだな!名前は?入部希望者なんだろ?」
「べ、別に……いい奴なんかじゃ」
アンズは本から目を離すことなく、さっと俺に入部届を差し出した。
こいつなら大歓迎ってことか。
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