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「レフェリー、カウント!」
俺が叫ぶと、その辺にいたラグビー部員が慌てて駆け寄り、床を叩いた。
「ワン、ツー、スリー!」
『カンカンカァン!試合終了ー!勝者、文芸部所属武田アントニオー!』
俺は須藤の頭から左手を放し、会場で目を輝かせて拍手をする一年生達に見せつけるように、拳を天に向けて突き出した。
『以上、武闘派部活動の有志によるバトルロワイアルでしたー!ここで一旦休憩に入りまーす。後半は十分後開始の予定でーす』
梅田が機転を利かせてアドリブを入れると、舞台の幕が下り出したので、俺は須藤に乗っかったまま手を振りながら閉幕を待った。
「う……う、ごめん、番長。俺、またやっちまった。緊張するとキレるなんて、ホント駄目だよな、俺。こんなんじゃもう学校にいられないよ。ラグビー部になんて、いられないよ」
どうやら須藤は正気に戻ったらしい。
幕が下りたのを確認すると、須藤の背中から退き、俺は須藤に手を差し伸べた。
「バーカ。お前はラグビー部にいてもいいんだよ。お前はラグビー部のみんなに頼りにされてんだし、何より普段はすげぇ良い奴じゃねぇか。緊張してもキレないようにこれからしていきゃいいだけじゃねぇか」
「でも、直るかなんて分かんないし、いつまたキレるかもしれない」
「直る!絶対直る!お前が直したいと本気で思うなら直るさ。俺が卒業するまでに直してくれりゃいい。俺がいる内は、いつどこでお前がブチキレても、すぐ飛んで来てまた叩きのめしてやる。何度でもだ。だから、安心しろ。お前にはこんだけ必死になって止めてくれる仲間もいるんだ。何も心配なことなんてねぇのさ」
ズタボロになったラグビー部員達も集まり、床に膝をついている須藤に笑いかけた。
「番長、みんな……ありがとう!番長はホントすげぇよ!マジ尊敬するよ!」
「凄くなんかねぇよ。ダチが困ってたら助けるのは当たり前じゃねぇか。だろ?」
須藤は頷き、俺の手を力一杯握り、こうして、騒ぎは一件落着した。
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