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「おい、梅田。ここは文芸部室だ。アンズが読書してんだからでかい声出すな」
「あー……はい。ごめんね、アンズちゃん」
項垂れる梅田に、アンズは片手を挙げて応えた。
「気にしてないから早く用件言えってよ。良かったな」
人と話す時は目を見て話すべし。
俺の信条の一つなので、一旦本を閉じ、ゆっくり体を傾けてアンズを降ろした。
「よっ、と」
床に足をついたアンズがゆっくり立ち上がる間に、俺も一息で直立し、ピタッと二人並んで梅田達に向き直った。
「流石、文芸部の名コンビ。以心伝心だねぇ」
「へへっ、まぁな。家が隣で物心ついた時から一緒だからな」
腕を組んで仁王立ち。
俺のいつもの決めポーズ。
それを物珍しそうに、「おー」とか「すげー」とか「近くで見るとすげー迫力ー」とか言ってる一年生諸君。
まさか、俺のファンか!?
「ああ、文芸部って大っぴらに活動してないからさ。生徒会まで部室の場所訊きに来る一年生が多くて、全員連れて来た。予想通り、見事に体育会系男子ばっかじゃん。よかったなー、ははは」
確かに、梅田が連れて来た一年生はみんな、結構良い体格をしている。
運動部に入ればいいものを、わざわざ文芸部に入る気なのか?
いや、俺が言えたことじゃねぇけど。
「お前ら、ここは文芸部だぞ?もしかして入部したいのか?」
俺の問いかけに、一年生諸君は声を合わせて「オス!」と元気良く答えた。
腹から声が出てやがる。
こいつら間違いなく体育会系だ。
それも武闘派の。
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