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「ごめんね。ごめんね……」
泣きじゃくる私の傍で、彼はどんな顔をしているのだろう。
繋いでくれる手はいつものように温かくて、感情が読み取れない。
誰もいない図書室の隅、私たちは人目から逃れるように息をひそめていた。
本の優しい匂いが自分を柔らかく包む。だけど私の心は今にも張り裂けそうだ。
涙でぐしゃぐしゃな顔を下に向け、決して彼の顔を見ようとしない私に、彼はたった一言だけ呟いた。
「わかった」
すべてを凍らせてしまうほど冷たいその声が、私の胸を突き刺す。
そして彼は惜しむことなく私の手を離し、背を向けて、図書室の出入口へと向かった。
待って、行かないで。
……なんて言えるわけがない。
それほどまでに、私の決断は残酷だったのだから。
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