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「せ、先輩。私、そろそろ帰らないと。うち門限厳しくて……」
と下手くそな作り笑いを浮かべて先輩の腕を放し、てのひらをピタッと先輩の胸元にかざした。
これ以上近づかないで、という無言の訴えだ。
「今日はご馳走様でした。皆さんにもお礼のメールしなきゃいけないし、それじゃあ……」
と踵を返そうとしたところで、ガシッと肩を捕まえられて、痛みを知る。
先ほどよりも強い力に、ビクッと体が固まった。
「なんだぁそれ。空気読もうよ日比野ちゃぁん」
低くなった先輩の声に恐怖を覚え、私は言葉を失う。
先輩はすぐ近くの路地裏に私を引きずり込むと、私の背中を壁に押し付け、両腕で逃げ道をふさいだ。
「日比野ちゃんさぁ、すごく可愛いのに超~損してるよ。いいか? 空気は読まなきゃダメだって」
目を据わらせて説教を始めた先輩は、小馬鹿にするように私を笑った。
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