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「そんなだから高校の時、いじめられてたんじゃないの?」
「!!」
ズキッと胸の奥が傷んだ。
上手に包み込んだはずの古傷が顔を出す。
机の上の花瓶。水をかけられたトイレの個室。
クスクス笑う女子たちの声。
ちっぽけな自分を飲み込んでしまいそうなほど強い悪意に、私という存在はどんどん形を保っていられなくなる……あの感覚。
「せっかくサークルの仲間とは上手くやってんだからさぁ。空気大事にしようよー」
俯いたまま震える私に、先輩は勝ち誇ったように笑い、その手を私の頬に触れた。
――――その時だった。
「あんたら、邪魔」
感情を含まない細い声が聞こえたと思ったら、突然 大量の冷たい水が横からかけられて、全身がずぶ濡れになった。
「うわっ、冷てぇー!!」
同じくびしょびしょにされた先輩が私から体を離し、犬みたいにぶるぶると頭を振っている。
私たちは同時に水がかかってきたほうへ顔を向けた。
「……!!」
胸の鼓動がどくんと跳ね上がり、私は呼吸を忘れて『その人』を見つめた。
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